
葬儀は、数日のうちに多くのことを決めなければならず、悲しみのなかで意見が食い違いやすい場面です。この記事では、揉めやすい5つの論点について、一般的な考え方と、話し合いの前提をそろえるための視点を整理します。どれか一つを「正しい」と決めるものではなく、選択肢を示す一般的な情報提供です。
1. 喪主
喪主について、法律上の決まった順位はありません。配偶者や子が務めることが多いものの、故人の希望、同居の有無、家族の事情などをふまえて、話し合いで決めるのが一般的です。
- 故人が希望を残していないか(エンディングノート、遺言書、口頭で聞いていた話)。
- 喪主になる人の負担(連絡、対応、費用の立て替え)を、家族でどう支えるか。
- 喪主と、墓・仏壇を守る人(祭祀承継者)は、別の人でも構いません。
2. 葬儀の費用
葬儀費用を誰がどう負担するかについては、裁判例でも見解が分かれています。たとえば、喪主が負担するという考え方、相続人が相続分に応じて負担するという考え方、遺産から支出するという考え方、地域や慣習を重視する考え方などがあり、いずれかに決まっているわけではありません。
- 誰がいったん立て替えるか。後から精算する前提かどうか。
- 遺産から支出する場合、遺産分割の話し合いとどう関係づけるか。
- 上限の目安と、含める費用の範囲(式場、飲食、返礼品、お布施など)。
相続税の計算で葬儀費用がどう扱われるかなど、税金に関することは、税理士にご相談ください。
3. 香典
香典の扱いも、家族の事情や考え方によって分かれます。葬儀費用に充てる、喪主が受け取る、相続人で分けるなど、実際にはさまざまな整理がされています。法律上の取り扱いについては、見解や事案によって異なることがあります。
- 香典を葬儀費用に回すか、回さないか。
- 香典返しの費用と手間を、誰がどう負担するか。
4. 葬儀の形式
家族葬、一般葬、一日葬、直葬・火葬式など、形式によって、参列者の範囲、日程、費用が変わります。故人の希望と、遺された家族の事情(参列してほしい人、遠方の親族、費用)を並べて考えると、話し合いが進みやすくなります。
- 訃報を誰に伝えるか。伝えないと決めた場合の後日の対応。
- お付き合いのあるお寺(菩提寺)がある場合は、早めに相談するのが一般的です。
- 無宗教で行う場合の進め方。
5. 墓と祭祀承継
墓や仏壇、系譜、祭具などを引き継ぐ人を、祭祀承継者といいます。民法897条は、これらの承継について、通常の相続(遺産分割)とは別の扱いを定めています。一般に、次の順で決まるとされています。
- 故人が承継者を指定していれば、その人。
- 指定がなければ、慣習に従う。
- 慣習も明らかでなければ、家庭裁判所が定める。
墓の維持費や、遠方・後継ぎがいない場合の選択肢(墓じまい、永代供養など)も、早めに話し合っておくと安心です。
話し合いの材料として
家族それぞれの考えを事前に見える形にするには、葬儀の事前合意シートが使えます。費用の分け方の選択肢を並べたいときは、同じシートの「費用の分け方を比べる」をご利用ください。また、生前の家族会議の進め方もご覧ください。
一般的な情報提供であり、法的助言・税務助言ではありません。個別の判断が必要なときは、依頼する費用をきちんと用意して、弁護士・司法書士・税理士にご相談ください。